大統領選挙年の韓国政治

神戸大学大学院国際協力研究科 教授 木村 幹

はじめに

 韓国にとっての2007年 − 米韓FTA、南北頂上会談、そして、大統領選挙(12/19)

大統領選挙の結果のみならず、

そこに至る過程が我が国、更には、北東アジアの政治状況に大きな変化を与える

1.            いくつかの前提

 a)盧武鉉大統領の「反転攻勢」(06/12/21)−大統領候補者群を含む有力政治家、政治勢力に対する露骨な批判を開始(「大統領」から「民主化運動家」への回帰)

ターゲットとしての、

 高建元国務総理、孫鶴圭前京畿道知事、ウリ党+旧軍幹部

その最大の特徴は、

 攻撃の主たる対象が、野党や日本等にではなく、旧与党内勢力にも向けられていること

b)六者協議の「合意」(07/2/13)−盧武鉉大統領の継続してきた「包容政策」を正当化する

 → 国民はこれを歓迎し、野党・ハンナラ党も「包容政策」を容認する方向に転換

 → 北朝鮮に対する政策そのものは、恐らく、大きな対立軸にならず

c)米韓FTA(07/04/03)−一部有力与党系政治家の強力な反対運動、予想に反した国民の大きな支持

 → 六者協議の「合意」と併せて盧武鉉大統領の支持率を急上昇させる(「植物大統領」からの甦生)

 d)「大統合民主新党」の結成 − 与党系政治家の大部分が参加

(鄭東泳・孫鶴圭・李海瓚の三者対立 → 鄭東泳が抜けだす)

 e)李明博のハンナラ党予備選勝利 − 朴槿惠陣営のスキャンダル攻勢を耐え忍ぶ(「スキャンダル慣れ」)

 → 更なるスキャンダルはあるか??

2.            韓国政治を見る4つのベクトル

1.基本的対立軸

 a)外交的対立軸

   親北朝鮮(左) ←→ 新アメリカ(右)

 → 070213合意以後は、アメリカが対北融和に大きく触れたために、甞てのような意味を喪失

 b)新自由主義を巡って

   「大きな(或いは強力な)政府」 ←→ 「小さな政府」

 → 朴槿惠、孫鶴圭が敗北することにより、前者に集約しつつある

2.韓国固有の対立軸

 c)「改革」を巡って(歴史見直しを含む)

   「改革/進歩/民族主義的」 ←→ 「保守/守旧/国際協調的」

 d)開発か福祉か

   「上からの開発」 (朴正煕的)←→ 「格差是正」(盧武鉉的)

これらの対立軸を、

 もう少し詳しく見てみると....

 a)旧来の左右軸の機能不全 − 典型としての「反米」であった筈の盧武鉉のFTA強力推進

背景 (1)6者協議における米朝の妥協への動き(短期的)−親米の為に韓国が北朝鮮を支援

(典型的なものとしての、5万ドル重油相当エネルギー先行支援)

    (2)世論における対北朝鮮「包容政策」の定着 − リトマス試験紙としての核実験

    (3)米軍戦略的再配置(Transformation)への配慮 − 「見捨てられること」の不安

    (4)通貨危機の経験 − 国際社会からの孤立への恐怖

結果として、

 親北朝鮮であり、また、親アメリカである世論の定着(中国への警戒も存在)

 → 李明博も北朝鮮の「開発」を示唆

次に、

 盧武鉉政権の影響としての、

 c)「改革」の神話の終焉 − 「改革勢力」の方向性喪失

cf.前期盧武鉉政権と小泉政権、後期盧武鉉政権と安倍政権の類似

 → 結果としての、韓国における左右軸の不明瞭化(何が改革か、与党とハンナラ党はどこが違うのか)

 → 集約点としての「開発」vs「福祉」

加えての、盧武鉉大統領自身の「改革派」批判

注意

 韓国における経済成長への期待水準は依然として極めて高く(総ての大統領候補者は成長率7%以上を主張している)、「成長か安定か」という問題は争点になりにくい

3.            現状分析

基本的状況

○ハンナラ党 − 李明博(イ・ミョンパク)候補決定

 → スキャンダル発覚の可能性消えず(1996年の不正選挙疑惑、現代建設社長時代の対政府癒着)

 → 寧ろ、「80年代型スキャンダル」に世論がどのような反応を示すかが焦点

 → その意味で、既に様々に「テスト」済み、という意見も

    与党系勢力 − 反盧武鉉系(鄭東泳・孫鶴圭)vs親盧武鉉系(李海瓚)の対立

 → 鄭東泳が勝利した場合、親盧武鉉系、及び、盧武鉉の協力が得られるか?

3.            日本との関係への展望

1)            歴史問題等で、日本に歩み寄る姿勢を見せる候補者存在せず

 → 李明博も父祖の「親日派疑惑」を抱えており、そもそも親日的政策に積極的ではない(票にならない)

2)            北朝鮮問題での政策の固定

 → 六者協議等で日韓の連携は困難

3)            対米関係の相対的安定化 − 盧武鉉政権の隠れた成果(戦時統帥権問題、FTA、基地移転問題の解決) → もはや米韓関係は大きな争点とはならず

4)            警戒の対象としての急速な日中の和解 − 対抗策としての中韓FTAの推進(更にEU、日本とも)

 → 場合によっては大統領選挙の大きな争点に


参考 2006年以後の政治的出来事

01/02   内閣改造(副首相兼科学技術部長官・金雨植、統一部長官・李鍾奭、産業資源部長官・丁世均等)

01/03   内閣改造(社会福祉部長官・柳時敏)、ウリ党首脳部との対立激化

01/05   李海瓚国務総理、「長官は国政哲学を履行できる見方と価値観を持っていることが基本で、能力はその次」

01/11   盧武鉉、「脱党」発言

01/17   国民中心党結成

02/03   韓米自由貿易協定推進、発表

02/23   大統領府行政官、国家安全保障会議(NSC)議事録漏洩

02/25   盧武鉉、「任期5年は少々長いようだ」、「途中で選挙が幾度も行われることにより、国政が揺らぎ歪曲される」

03/01   盧武鉉、「韓国の国民の立場では、日本は侵略と支配の歴史を正当化し、再び覇権の道に進むかもしれないという疑いを感じるのは当然なこと」

03/02   内閣改造(行政自治部長官・庸燮、文化観光部長官・金明坤等)

03/13   米国系ファンド「ローンスター」による外換銀行買収に対する捜査開始

03/14   李海瓚国務総理辞表受理

03/21   李炳浣大統領秘書室長、「盧武鉉大統領の残りの任期の間は安全航海が重要だ

03/24   韓明淑、国務総理指名

04/21   竹島近海における衝突回避

04/25   盧武鉉、「日本政府が過ちを正すまで、国家的力量や外交的資源を総動員し、いかなる費用や犠牲が伴おうとも決して放棄したり妥協したりしないだろう」

04/25   金大中前大統領6月訪朝合意

05/03   盧武鉉、「いつまでも米国に頼っては生きられない」

05/12   黄禹錫ソウル大教授の論文操作事件最終捜査結果発表

05/20   朴槿恵被襲

05/24   北朝鮮、南北列車試運転を取り消し

05/31   統一地方選挙、ウリ党惨敗

06/02   盧武鉉、「一、二回選挙に負けるぐらい大したことではない」

06/13   盧武鉉、「変化のない社会は停滞し取り残される」

07/05   北朝鮮ミサイル実験

07/14   南北閣僚級会談決裂

07/17   盧武鉉、「米国は友邦なので厳しく責めることは出来ないが、日本とは対決しなければならない」

07/23   李鍾奭、「(北朝鮮問題に関して)失敗したかどうかで考えれば、論理的にアメリカが最も多くの失敗をした」

07/26   国会議員再・補欠選挙、ウリ党惨敗、趙舜衡民主党候補当選

08/02   金秉準副総理、論文盗作疑惑で辞意表明

08/09   盧大統領、次期大統領選候補のウリ党外部擁立を示唆

08/10   盧武鉉、「統制権は十分行使できる」

08/15   小泉総理、靖国神社参拝、盧武鉉「日本は過去を反省し、謝罪を裏付ける実践を」

08/18   全孝淑憲法裁判所長候補指名(11/27撤回)

盧武鉉、「最近は少し悩んでいる」「私が何を間違ったのか分からない」

09/14   韓米首脳会談

10/09   北朝鮮核実験強行、日韓首脳会談

        盧武鉉「状況は韓国の役割が縮小する方向に急激に変わっている」

10/13   潘基文、国連事務総長選出

        韓中首脳会談

10/25   李鍾奭統一部長官、尹光雄国防長官、辞意表明

        国会議員再・補欠選挙、ウリ党惨敗

        民主労働党議員、スパイ事件

10/27   金昇圭国家情報院長、辞意表明

11/14   PSI不参加、金剛山・開城工団事業継続決定

        秋秉直建設交通部長官等、辞意表明

11/15   不動産対策発表

11/20   盧武鉉、「私はあまり人気がないので悩んでいる」

11/26   盧武鉉、「与野党政府政治交渉会議」提案

11/28   盧武鉉、「任期を全うできない初の大統領にはならないことを望む」

11/30   盧武鉉、「私は新党に反対する」、「これは地域党を作るというものだ」

12/01   宋旻淳外交部長官任命

12/18   6者協議再開

12/21   盧武鉉、「高建氏の首相起用、失敗した人事」

戦時作戦統制権の韓国軍への早期移管に反対している国防長官・参謀総長経験者等を批判

12/26   盧武鉉「これまで我慢してきたが、これからは一つ一つ対応し、解き明かしていく」

12/28   丁世均産業資源部長官、辞意表明

   金槿泰・鄭東泳、盧大統領抜きでの新党結成に合意

01/08   廉東淵議員、ウリ党大会以前の離党の意志を表明

01/09   盧武鉉、大統領4年重任制憲法改正案提出を表明

01/15   高建、大統領不出馬表明

02/07   千正培等集団離党

02/13   六者協議「妥結」

03/19   孫鶴圭ハンナラ党離党

03/20   盧武鉉、孫鶴圭批判

04/10   中国温家宝首相訪韓、韓中FTA締結に意欲

05/25   米韓FTA文献公開

      イージス艦「世宗大王号」浸水式

06/11   ハンナラ党、大統領予備選挙登録開始

07/19   アフガニスタンにおける韓国人拉致事件発生

07/27   国旗に対する忠誠の文章改変

08/20   ハンナラ党、17代大統領候補に李明博を選出

08/21   大統合民主党、予備選候補者登録開始

09/02   アフガニスタンにおける韓国人拉致事件被拉致者10名帰国

09/05   同党、予備選挙候補者確定(5名)

09/06   鄭夢九、現代・起亜自動車グループ社長に5年間8400億ウォンの社会奉仕等を条件とする執行猶予付き有罪判決

大統領官邸、李明博候補陣営を名誉毀損で告発

09/07   ブッシュ米大統領、北朝鮮が核開発完全放棄した場合には、平和条約を結ぶ準備があると発言

09/10   シン・ジョンア事件で、ビョン・ヤングン青瓦台政策室長が辞職

09/11   キム・スヨン韓国火薬グループ会長に、報復行為で執行猶予付き有罪判決。

09/14   韓明淑前首相、大統合民主新党の予備選挙参加を放棄、李海瓚元首相支持を明言

09/15   権泳吉、民主労働党候補に選出

10/14   大統合民主新党、大統領候補者確定


資料1群 北朝鮮関連

核実験直後の世論

○取るべき対策(韓国社会世論研究所10月11日)

  ●核実験の結果としての具体的脅威の内容 

海外資本離脱36.7%、アメリカの北朝鮮攻撃19.2%、北朝鮮の核攻撃15.7%、

日本等周辺国核武装14.9%、国内政治混乱11.8%

  ●政策    対北政策再検討54.3%、方向は維持して一部修正35.9%、継続維持7.8%

              南北協調優先51.2%, 米国協調優先45.0%

核廃棄前の南北平和宣言、反対が賛成上回る=世論調査

北朝鮮が核廃棄をまだ約束していない中、来月2日から行われる南北首脳会談で「南北平和宣言」や西海(黄海)の北方限界線(NLL)の見直しについて話し合うことに対し、反対意見が賛成意見よりやや多いことが分かった。

韓国ギャラップの調査の結果、「南北平和宣言」やNLLの見直し論議の前に、まず北朝鮮の核廃棄の約束が必要だ、と回答した人は46.6%に上り、「必要ない」の43.2%を上回った。大統領選候補者の支持層別に見ると、ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)候補の支持層では「核廃棄の約束が必要だ」と回答した人が多数を占めた一方、与党側勢力の候補者らの支持層では「核廃棄の約束は必ずしも必要ではない」という見解が多数を占めた。また、盧大統領が北朝鮮で「アリラン公演」(体制宣伝のための大規模なマスゲーム)を観覧することについては「国民の意識を考慮すれば、相互の体制を理解するという点で、観覧しても問題はない」という回答が67%を占め、「北朝鮮の体制を宣伝し、金日成(キム・イルソン)・金正日(キム・ジョンイル)父子を称える内容であるため、観覧すべきではない」(29.3%)を大幅に上回った。

一方、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の国政運営については、「よくやっている」という回答は26.5%で、先月25日の33.8%(韓国ギャラップの調査)、今月8日の28.4%(韓国リサーチの調査)に続き、下落傾向が止まらない結果となった。昨年末の韓国ギャラップの調査では、盧大統領の支持率は、不動産政策をめぐる混乱をはじめとした「国政運営の失敗」や、任期途中での辞任を示唆した発言などで、12.3%という過去最低の数値を記録したが、今年に入って韓米自由貿易協定(FTA)の締結交渉妥結や南北首脳会談の決定などで30%台にまで回復していた。ところが先月末以来、青瓦台(大統領府)のビョン・ヤンギュン前政策室長や鄭允在(チョン・ユンジェ)元秘書官による、権力をかさに着た不正行為が明るみに出たことで、支持率も再び下落傾向に転じた。

また、各政党の支持率は、ハンナラ党が56.9%となり、昨年5月31日の統一地方選以来、16カ月連続で50%を超えた。一方、大統合民主新党(15.5%)、民主労働党(9.5%)、民主党(4.3%)の支持率は秋夕(チュソク、韓国の旧盆)連休前とほとんど変わらない結果となった。


資料2群 FTA関連

FTA交渉妥決、金鉉宗本部長が内容明らかに

4月3日9時17分配信 YONHAP NEWS

【ソウル2日聯合】

韓米自由貿易協定(FTA)交渉で韓国側交渉代表を務めた金鉉宗(キム・ヒョンジョン)通商交渉本部長は2日、同日に妥結した交渉について会見し、内容を明らかにした。
商品関税譲許(開放)では、両国がすべての関税を撤廃することにし、このうち94%の品目については3年以内の撤廃を進める。自動車は自動車部品と排気量1500〜3000ccに乗用車について関税を即時撤廃し、3000cc以上の乗用車は3年後に撤廃する。またタイヤは5年、ピックアップトラックは10年かけて課税撤廃を段階的に進めていく。韓国は特別消費税をFTA発効後3年以内に料率を5%に単一化し、自動車税は現行の5段階から3段階に簡素化する。
両国は朝鮮半島域外加工地域委員会を設置し、朝鮮半島の非核化進展など一定の要件下で域外加工地域を指定する根拠を協定文に明示し、これを通じて今後開城工業団地などで生産される製品を韓国製として認める基盤を作った。
繊維分野では米国が輸入額基準で61%の品目について関税を即時撤廃し、リネン、リヨセル、レイヨン、女性用ジャケット、男性シャツなどについては厳格な原産地基準の適用例外を与える。農業分野ではコメを開放対象から除外し、オレンジ、大豆、ジャガイモ、粉乳などについては現行の関税を維持する。牛肉、豚肉、トウガラシ、ニンニク、タマネギなど他のセンシティブ品目もセーフガード、関税割当(TRQ)、関税撤廃長期履行など、開放緩衝装置を置くことにした。
貿易救済は両国間の貿易救済委員会を設置し、調査開始前に事前通知と協議、価格・物量合意による調査中断制に合意した。相手国が実質的な産業被害の原因ではない場合には、多者セーフガード適用対象から除外できるようにした。サービス分野では、国産映画の上映割当のスクリーンクォータを現行のまま維持することにし、放送クォータは一部緩和したが外国の番組の再送出や吹き替えは認めないことにするなど、段階的な開放計画を盛り込んだ。
医薬品は米国側の要求である新薬の最低価格保障は反映しないが、独立的な異議申し立て手続きをまとめ、医薬品試験基準と複製薬の市販許可の相互認定に向けた協議開始などで合意した。金融分野ではセーフガードを導入することにし、知的財産権では著作権保護期間を50年から70年に延長する。通信分野では基幹通信事業者の外国人持ち株制限を49%のまま維持し、15%となっている国内法人設立を通じた間接投資制限はFTA発効後2年以内に撤廃する。ただしKTとSKテレコムは除く。
金本部長は「韓米FTAは韓国経済全般に新たな成長動力を提供するものと期待できる」と述べた。また米国側代表を務めたバティア米通商代表部(USTR)次席代表も「FTAは歴史的成就だ。戦略的なパートナーシップを強化できる」と満足感を示した。

米韓FTA妥結が与える影響(ソウル経済 07/04/05)

 

利益が大きい

損害が大きい

利益も損害もない

DNK

韓国の国益

42.4

29.7

25.4

2.5

米韓貿易

40.5

32.3

22.9

4.2

日中欧等との貿易競争

48.6

19.1

22.6

9.6

FTA交渉状況比較(中央日報 07/04/05)

 

協定発行

協定締結

交渉進行中

共同研究中

日本

シンガポール・マレーシア・メキシコ

フィリピン・タイ

ASEAN・インドネシア・ブルネイ・チリ・GCC・インド・韓国(中断)

ベトナム・豪州・スイス

韓国

チリ・シンガポール・EFTA

ASEAN(商品)・アメリカ

インド・カナダ・ASEAN(サービス、投資)・日本(中断)・メキシコ(中断)

EU(5月交渉開始)・GCC(年内交渉開始)・南米共同市場(研究完了)・中国・豪州・ペルー

中国

ASEAN・チリ

パキスタン

豪州・ニュージーランド

インド・GCC・アイスランド・南ア共和国


図3群 大統領選挙の状況


李明博(イ・ミョンバク、1941年12月19日)は、韓国の政治家。前ソウル特別市市長。日本名は月山明博(-1945年)。

現代建設社長、国会議員(ハンナラ党)などの要職を歴任後、2002年のソウル市長選挙で当選し、20万人の人々を説得の末実現された清渓川復元事業の実施で実績を上げた。また、2007年末に予定されている次期大統領選挙有力候補の一人とされ、各種世論調査でも軒並み1、2位に上がっている。

人物像

政界入り以前は経済人として有名で、中小企業に過ぎなかった現代建設で辣腕を振い、36才で社長に就任して韓国のトップ企業に押し上げた。現代の韓国を創った50人に選ばれるなど、韓国におけるサラリーマン神話の代表的人物とされている。

ニックネームは「ブルドーザー」。建設業出身ということもあり開発政策が得意で、市長時代には清渓高架道路の撤去と清渓川の復元を実現した。なお、次期大統領選挙には、漢江と洛東江を結ぶ「韓半島大運河(内陸運河)プロジェクト」構想を主要公約に掲げている。

朴正熙政権時、日韓基本条約締結の事前段階の日韓会談反対闘争(6・3事態)を高麗大学校商科大学学生会長として主導し、逮捕された。最高裁で懲役3年・執行猶予5年(服役6ヶ月)の判決を受けており、このことから朴正熙の娘で、同じハンナラ党次期大統領選挙候補のライバルである朴槿恵に対し敵愾心を抱いていると言われている。

韓国の政治家の多分に漏れず、反日性向は強く、日韓併合時代に建てられた、現ソウル市庁舎を太極旗で全面覆うイベントを開催した[1]。他にも、日本の歴史歪曲教科書採択防止の為の寄付金を1億3200万ウォン集金したり、ソウル南山に建設されるユースホステルに日本の修学旅行生を誘致して竹島(韓国名・独島)領有権や日帝の残虐性を学ばせる計画案や、「石原慎太郎東京都知事は四流、五流の政治家」発言など枚挙に暇が無い。その一方で、2006年1月のダボス会議では、「一部アジアの政治指導者は、過去の歴史に縛られて、国家間の緊張を高め、未来を暗くしている」と、与党であるウリ党から「親日発言」だと批判される主張をするなど、日本への配慮をうかがわせる言動も見せている。

現在、国会副議長の李相得(イ・サンドゥク、이상득)は実兄である。

出生地は慶尚北道浦項とされていたが、後に自叙伝で日本の大阪であることを明らかにした。また当時、父親が「月山」という姓に創氏しており、本人もその姓を使用していたと兄の李相得が語っている。

略歴

1941年- 大阪で出生

1961年- 高麗大学校入学

1965- 現代建設入社

1977- 現代建設代表取締役社長就任

1988- 現代建設代表取締役会長就任

1992- 第14代国会議員当選(民自党、全国区)

1996年- 第15代国会議員当選(新韓国党、ソウル鐘路区)

1998年- 第15代国会議員辞任

2002年- 第32代ソウル特別市市長就任

2006年-        ソウル特別市市長退任


図5群 李明博ブームの背景


李明博候補、国家予算10兆ウォン減らす  OCTOBER 01, 2007 03:08

野党ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)大統領選挙候補が、公務員に提供される賄賂をなくし、国策事業の効率を高め、国家予算を年間10兆ウォン以上節減する「黒い金、不明な金、漏れた金」防止公約をまもなく発表する。

ハンナラ党の大統領選挙公約をまとめた「一流国家ビジョン委員会」関係者は30日、「賄賂につながる汚職の輪を完全に断ち切り、国策事業の進行過程で漏れ続けるコストを減らせば、国の予算の約10%を節減できる」とし、「透明な税源確保を通じて脱漏を防ぐ案も公約に含まれる予定だ」と述べた。

委員会は、公務員が「ブラックマネー」を受け取って摘発されれば、受け取った金の50倍を過料として支払わせる案を有力に検討している。これは、選挙で不法選挙資金を受け取った場合50倍の過料を払わせる規定を取り入れたものだ。

委員会はまた、社会間接資本(SOC)など大型国策事業を進行する過程で国の予算が「不明な金」として浪費される例が少なくないとみなし、予算執行の効率を高める案も含ませる方針だ。関連公務員の裁量を最小化し、不要に予算が追加執行されることがないようにするということだ。特に、管理上の死角地帯に放置されている予算を最小化するという構想だ。

この他にも委員会は、脱税による「漏れた金」を最小化する案もまとめている。特に、高所得専門職・自営業従事者の収入を完璧に把握するための対策も盛り込む計画だ。ただし税金問題は関連当事者の選挙心理に決定的な影響を与えるため、範囲は制限的に設定する必要があるというのが委員会の判断だ。

李候補は、予算節減に成功したソウル市長時代の経験を大統領に当選した場合にも積極的に活用するという意志を明らかにし、この公約を徹底的に準備してもらいたいと党に要請した。これを受け、委員会は党役員、元官僚、大学教授ら10人余りの別途チームを立ち上げ、1ヵ月近くこの作業に取り組んできた。

一方、李候補は残りの公約も100件以内にまとめ、来週、中央選挙対策委員会の発足以後、連続して発表する予定だ。ハンナラ党が2002年の大統領選挙当時、241件の公約を掲げたのとは違い、実践可能性が高く実感できる実用的な中核公約を中心に整理し、民意に訴えるという戦略だ。

李候補が予備選挙期間に明らかにした「7・4・7構想(年7%の経済成長、1人当たりの国民所得4万ドル、経済7大国)」ビジョンを実現するための「韓半島大運河建設」「南北経済共同体の樹立」「中産層の復元」「働く公務員像の定立」などの公約が含まれる予定だ。

特に、予備選挙のライバルだった朴槿恵(パク・グンヘ)前代表が打ち出していた「税金を減らし、規制を緩和し、法秩序を立て直す」という公約と、「6大生活費の支出を30%減らそう」という公約も、大統領選挙公約に含ませる予定だ。


図6群 経済状態




ランキング上位50都市 (順位と指数)


Mercer Human Resource Consulting
Cost of Living Survey -Worldwide Rankings 2006

Rankings

   

COL Index

March 2006

March 2005

City

Country

March 2006

March 2005

1

4

MOSCOW

Russia

123.9

119

2

5

SEOUL

South Korea

121.7

115.4

3

1

TOKYO

Japan

119.1

134.7

4

9

HONG KONG

Hong Kong

116.3

109.5

5

3

LONDON

United Kingdom

110.6

120.3

6

2

OSAKA

Japan

108.3

121.8

7

6

GENEVA

Switzerland

103

113.5

8

8

COPENHAGEN

Denmark

101.1

110

9

7

ZURICH

Switzerland

100.8

112.1

10

10

OSLO

Norway

100

105.3

10

13

NEW YORK CITY

United States

100

100

12

15

ST.PETERSBURG

Russia

99.7

99.5

13

11

MILAN

Italy

96.9

104.9

14

19

BEIJING

China

94.9

95.6

15

22

ISTANBUL

Turkey

93.1

93.8

15

12

PARIS

France

93.1

102.2

17

34

SINGAPORE

Singapore

92

88

18

13

DUBLIN

Ireland

91.8

100

19

20

SYDNEY

Australia

91.3

95.2

20

30

SHANGHAI

China

91.2

90.4

21

17

ROME

Italy

89.8

97.3

21

54

KIEV

Ukraine

89.8

84.5

21

16

VIENNA

Austria

89.8

97.8

24

39

TEL AVIV

Israel

89.7

87.6

25

20

HELSINKI

Finland

87.8

95.2

25

73

DUBAI

United Arab Emirates

87.8

77.8

27

22

DOUALA

Cameroon

87.6

93.8

28

29

TAIPEI

Taiwan

86.8

90.6

29

44

LOS ANGELES

United States

86.7

86.7

30

64

ABU DHABI

United Arab Emirates

86

81

31

96

LAGOS

Nigeria

85.5

72.8

32

52

BEIRUT

Lebanon

85.4

84.6

32

50

HANOI

Vietnam

85.4

84.9

34

119

SAO PAULO

Brazil

85

66.6

34

50

SAN FRANCISCO

United States

85

84.9

36

18

STOCKHOLM

Sweden

84.8

96.8

37

56

HO CHI MINH CITY

Vietnam

84.2

83.8

38

52

CHICAGO

United States

84.1

84.6

39

57

MIAMI

United States

83.9

83.3

40

124

RIO DE JANEIRO

Brazil

83.5

65.4

41

123

LUSAKA

Zambia

83.4

65.6

41

24

AMSTERDAM

Netherlands

83.4

93.3

43

45

WHITE PLAINS

United States

83.2

86.6

44

63

SHENZHEN

China

82.9

81.3

45

26

ABIDJAN

Cote d’Ivoire

82.8

93

45

36

DAKAR

Senegal

82.8

87.9

47

82

TORONTO

Canada

82.6

76.2

48

71

JAKARTA

Indonesia

82.4

78.9

48

31

BRATISLAVA

Slovak Republic

82.4

89.9

50

28

PRAGUE

Czech Republic

82.1

90.8


資料7群 鄭東泳

鄭 東泳(チョン・ドンヨン、1953年7月27日 - )は、韓国の政治家。全羅北道出身。ヨルリン・ウリ党前議長。

1979年ソウル大学校国史学科卒。文化放送 (MBC) に入社し、報道局政治部の外務部(現 外交通商部)、統一院(現 統一部)、国会担当記者やロサンゼルス特派員、「MBCニュースデスク」アンカーなどを務めた。MBC在籍中の1988年に英国ウェールズ大学大学院を修了(ジャーナリズム学修士)。1996年に第15代国会議員に当選。2000年から新千年民主党でスポークスマン。2003年にウリ党創党の一人となり、二度にわたり党議長を務めた。

2004年、統一部長官に就任。2005年6月には北朝鮮を訪問し、金正日国防委員長との電撃面談を果たす。12月、次期大統領選準備のため統一部長官を辞任。2006年1月、党議長再選。5月日韓が領有権を主張する竹島に上陸し、「領有権三原則」を発表。金槿泰前保健福祉部長官らとともに、与党における2007年末実施予定の次期大統領選挙の有力候補の一人とされていたが、2006年5月31日に行われた統一地方選挙で大敗を喫した責任を取って党議長を辞任し、候補者レースで出遅れることとなった。

鄭東泳、釜山慶尚南道−光州全羅南道でもトップ

OCTOBER 01, 2007 03:08

29日と30日に開かれた大統合民主新党の釜山慶尚南道(プサン・キョンサンナムド)−光州全羅南道(クァンジュ・チョンラナムド)での大統領選挙予備選挙で、鄭東泳(チョン・ドンヨン)元ヨルリン・ウリ党議長が、合計でトップに立った。

30日午後、釜山べクスコで発表された釜山慶尚南道地域の予備選挙で、鄭元議長は有効投票3万629票中1万1150票(36.4%)を得て、李海瓚(イ・へチャン)元首相(1万890票、35.5%)や孫鶴圭(ソン・八キュ)前京畿(キョンギ)知事(8577票、28%)を抑え、トップに立った。

前日、光州全羅南道の選挙でも、鄭元議長は5万5797票のうち2万6065票(46.71%)を得てトップに立っており、次いで孫前知事が1万9906票(35.6%)、李元首相が9826票(17.6%)の順だった。

これを受け、30日現在、大統合民主新党の予備選挙8地域(済州、蔚山、忠清北道、江原を含む)の累積投票結果は鄭元議長が有効投票12万1698票のうち5万1125票(42%)を得票し、合計でトップに立った。

孫前知事は3万7851票(31.1%)で2位、李元首相は2万9641票(24.4%)で3位にとどまった。

予備選挙の投票率は、釜山慶尚南道が14.62%、光州全羅南道が22.5%で低迷した。

一方、29と30日に開かれた民主党の釜山慶尚南道−光州全羅南道(チョンラブクド)、江原(カンウォン)、大邱(テグ)、慶尚北道(キョンサンプクド)の選挙では、李仁濟(イ・インジェ)議員が合計で1位を記録し、総合累積得票(選挙を含む)でトップを守った。