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書評:
本田 優『日本に国家戦略はあるのか』
(朝日選書、2007.7.30) 760円+税
東生駒の駅前でほかの本を探しているとき、本書をみつけ、購入して即読。
著者は朝日記者ですが、早稲田大学理工学部を卒業後、社会部・政治部を歴任、取材をしている間に、「日本政府はその場凌ぎをしているだけで、明確な理念もビジョンも戦略もない」と痛感し、なぜそうなのかを追及したのが本書です。朝日に珍しく、常識のある記者が書いた真面目な「事実探求書」です。
私が注目した第一点は 196〜197頁の佐伯喜一野村総研所長の指摘です。
戦後の日本には「ある意味に於て国家目標があった」「すべての政策の上位に経済問題を置き、経済の復興発展に全力を投入して西欧レベル に追いつくこと」。その目標をほぼ達成したあと、新しい国家目標を見い出せないまま日本は迷走した、という指摘。
第二、参謀本部の河辺虎四郎大尉が1925年に起草した「国防並ニ作戦計画論」の用語整理。 203頁。
「国家は生存を図り発展して行くための国家経綸の大方針として国是を持ち、国是を遂行するための方策として国策を定める。国策を遂行して行くには外国からの妨害に遭遇する。この妨害を排除するのが国防であり、その力である国防力を建設・維持・運営する計画が国防計画であり、その大方針が国防方針である」
戦前の政治家は議会演説で「国家の政戦略」ということをよく口にしました。
政略+戦略。
ところが大東亜戦争では、政略も戦略も考える人は居ず、居たのは戦術 (目先の物事処理) を考える人だけでした。
戦後はもっと甚だしく、「政略も戦略も」「戦術さえも」考える人は居ません。次の選挙で当選することしか、政治家の頭にないのです。国家百年の大計どころか、十年先の洞察さえ、誰も考えていません。
第三、「国家戦略なき軍事戦略という戦前の失敗」 235頁
本書は、真面目な政治部記者が一人で取材し、「日本に国家戦略が必要な筈なのに、なぜないのか、戦前はどうだったか、戦後はどうだったか」を探求して跡づけた「大特集記事」です。
こういう問題に関心を持つ者にとって、知識の整理に頗る役立ちます。
ですが、日本にとって必要なことは、すべて自分で考えねばなりません。
自分で考えようとする者にとっては実に役立ちますが、手っとり早く答えを教わりたい人にとっては隔靴掻痒の書物です。
(平成19年8月17日記)