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       武士道について


 必要あって、武士道について少し調べました。


 まず、李登輝さんの『「武士道」解題──ノーブレス・オブリージュとは』

         (小学館、2003.4.10 第一刷/2003.6.10 第五刷)


これは、武士道の解説書というより、李登輝さんの回想録ないし精神史的エッセイというべき書物です。

「すべての改革は、精神改革に行き着く」というのが本書を一貫する主張です。



次に、森本哲郎『サムライ・マインド──歴史をつくる精神の力とは』

         (PHP研究所、1991.12.27)


哲学を学んだ著者は博引旁証、哲学者の名前や学説がたくさん出てきます。インド でのヨーガ体験もあり、話題も豊富です。ですが、読んでいて実に軽い。サラーッと書かれたエッセイです。

 「サムライ・マインド」と仮名書きすることにも、軽さが出ています。

 結局、この本でも「武士道」がよく判りません。



 納得できたのが、次の本です。


 葦津珍彦『武士道:「戦闘者の精神」』(徳間書店、昭和45.3.20)


まず「はしがき」で、「現代は戦国乱世の前夜時代」と喝破します。その通りですね。


国内=家庭・近隣社会が解体し、人間がばらばらになり、我儘者だらけになっていますから、乱世になるのはみ易い道理です。すでに親が子を、子が親を殺して平気な時代に突入しています。


国外=米中という覇権国家が覇権を競っており、世界をひっかき回しにかかっていますから、正に「戦国乱世の前夜」です。


その中で日本は?


戦前は、幕末動乱の中で「開国による攘夷 (自主独立) の達成」を考え、文明開化・富国強兵に突進しましたが、近隣諸国 (李氏朝鮮と李鴻章の清朝) が「以夷制夷」策を濫用したため、日本はまず日清戦争で清朝と戦い、次に日露戦争であのロシヤと戦う破目になりました。正に近隣の悪友のせいで、戦争しないと日本の安全が確保できない破目に追い込まれたのです。


日清戦争は、東アジア を覚醒させる大事件でした。李氏朝鮮の盲動を制止し、清朝の指導者を震撼しました。清朝が震撼したのは日清戦争であって、阿片戦争ではありません。

光緒帝とその取巻きが明治維新に倣って国内改革を図りますが、この動きは義和団事件後に清朝 (西太后) に取り入れられます。そして辛亥革命へ。


日露戦争は ロシヤ革命へ。


元寇のあと、元が中原から退き、朝鮮征伐のあと、明朝が倒れるのと似てます。日本と戦った相手は、旧態依然を保てなくなるのです。大東亜戦争のあと、列強が植民地を手放さざるを得なくなったように。


いや、脱線しました。

日清・日露戦争で安全保障を確立したあとの日本は、国是 (国家目標) を失い、各組織が官僚化して万事受身の対応をするようになり、西進する米国と衝突して敗戦。

戦後はもっと官僚化が進み、指導者が小粒化して低迷。いや、戦後の国是は明確でした。戦災からの復興と、その延長としての経済成長。

これを見事に達成したのが戦後40年経った1985年のプラザ合意でした。輸出で稼ぎまくる日本を抑えるため、「円高ドル安」で先進国が合意しました。このあと、恰も日露戦争のあとの如く、日本は低迷し始め、90年代の「失った10年」を経て、腑抜け状態が続きます。


日本現代史には40年+40年の80年サイクルがあるようです。


1868. 明治維新 → 1905.日露戦争勝利 → 1945.敗戦 → 1985. プラザ合意

2025.???


ところで本題の武士道です。

葦津さんは、戦国末期と幕末に武士道が活性化し、その中間の江戸期には理論的に整備されるが「机上の論」に堕するといいます。私は「磨き上げられたのだ」と見ます。


「戦国乱世の武士道」を代表するのは後藤又兵衛基次です。「己の本心のままに動く大丈夫」

でして、その本心とは、「欲するところ生より甚だしき者あり、悪むところ死より甚だしき者あり」。この本心に忠であるのが武士道だと。この本心に悖れば、君主と雖も捨てるのです。


なぜ、本心を大事にするか? それは「あの世」の故人がいつも自分を見ているからであり、「この世」に居る自分も、やがて「あの世」に行ったとき、故人たちから笑われぬようにと心がけるためです。彼等にとって、この世とあの世は別のものではなく、繋がっているのです。


もう一つ、大事なことがあります。彼等は戦場で敵と見えるときは勇敢に戦闘精神を発揮しますが、常に「敵に対する限りない深い同情の念」を抱いていることです。敵に情け容赦ないようでは、武士ではないのです。大東亜戦争で日本海軍が「とどめを刺さず」、米軍は波に浮かぶ兵をも情け容赦なく撃ったという違いです。


このあと、「安政大獄から赤間ケ関蹶起へ」「薩長連合の政治史」「明治思想史における右翼と左翼の源流」「日露戦役の国際的武士道」「東亜保全政策の理想」「昭和維新の思想的諸潮流」と続きます。


読みごたえのある本でした。