戻 る

21世紀日亞協会 平成19.11.13 (火)




2008年:台湾政治の関ヶ原?

帝塚山大学名誉教授

伊原吉之助


前 回:1.15 (月) 「台湾政治に何が起きているか:二大市長選挙を観察して」

昨年後半、陳政権どん底・「倒扁」赤シャツ軍が跳梁跋扈→台北・高雄市長選で緑陣営、蘇生?

今年、来年の二つの選挙へ向けて突進中!


I. 台湾の二つの選挙:青も緑も自陣営が勝つつもり……

1)前哨戦 1.12 の 立法委員選挙。改正選挙法=小選挙区比例代表制/定員半減 (225 → 123)

2)総統選 3.22:緑陣営=民主進歩黨・台灣團結聯盟 (台聯) /青陣営=中國國民黨・親民黨・新黨


II. 民進党の選挙対策:正名・制憲・国連加盟/政党財産の問題化/「4ノー1なし」→「4要1なし」ヘ

 06.12.台北・高雄市長選で緑が自信回復・台湾意識↑ を基に 国会多数・総統選勝利 を目指す

 正名:中華郵政→台湾郵政/中国造船→台湾国際造船/中国石油→台湾中油 etc.

 蒋介石抹殺:銅像撤去/中正紀年堂→台湾民主紀年館に改名/誕生日・死亡日、記念せず、etc.

 「4要1なし」:独立・正名・新憲法・発展+左右問題なく、統独問題あるのみ

 cf.「4ノー1なし」:「中共が武力発動を意図しない限り」という重大な条件付で、独立宣言・国名変更・二国論の憲法記入・統独公投をせず、

 国家統一綱領・国家統一委員会の廃止をしない

 国民党が不当取得した党資産の国庫返還:これを求める国民投票を、立法委員選と同時実施

 国連加盟の国民投票:米国政府と衝突(IV参照)/米台雙方とも譲らず→正面衝突へ?


攪乱要因:李登輝と台聯/ブレーン頼幸媛の暗躍。→民進党と「路線」の違いが明確化

  07.1.〜 李登輝の爆弾発言:『壹週刊』・TVBS・『自由時報』・『産經新聞』・『中央公論』……

 『諸君!』4月号:酒井亨「李登輝は『転向』したのか」の波紋→「転向」論争へ

  10.末〜 の 廖本煙・黄宗源・黄適卓・尹伶瑛除名の意味? 李登輝・頼幸媛が「統一左派」路線へ?

  11.10 (土) 11 (日) 群策會「格差是正・弱者救済」シンポジウム →台聯の新路線!

   台聯・李登輝の「路線転換」は、「弱者救済の左派路線」? 「統一左派・親共」の左派路線?

  11.12 第三社会党の若者、キリスト教徒林致真、「給李登輝的公開信」で李登輝を "パウロ" と礼賛

  cf.10.13 群策會「挑戦2008, 邁向正常國會」での李登輝講演:「中国の意中の候補が当選すれば、

  台湾は崩壊する」と指摘。→「台湾優先」「中国の併呑拒否」で李登輝は一貫している


III. 国民党の選挙対策:馬英九の足引っ張り要因=1)連戦・宋楚瑜。2)非・反・馬派の存在

 馬英九の人気・国民党の豊かな党産・利権ばら撒き

 (例:公務員の銀行利子 18% の優遇など) ・人材豊富・

 メディアと 教育が青陣営一辺倒・中共の支援・米との パイプ が 民進党よりずっと太いetc.

 10.31 国民党中常会、来年度の「中心任務」から「国統綱領・92共識の基礎の上に」を 削除

 →馬英九の選挙対策 (本土票獲得のため) だが、「統一放棄か」と国民党は大騒ぎ!

 馬英九の台湾一周キャンペーン: "long stay" 4ヶ月 →11.12 台北に帰着して終る


攪乱要因:青も緑も分裂気味。→政界再編? 第三勢力、存在の余地ありや?

 政敵=連戦・宋楚瑜/王金平……/疎遠=胡志強 (中華民国派) /朱立倫 (国民党本土派) ……


IV. 影の主役:米国と中国

(1)米国=「一中」政策+台湾海峡の現状の一方的変更に反対/中国=「経美制台」策を採用

基本は ニクソン訪中で形成(「72年体制」) → クリントン「戦略的パートナーシップ」→ブッシュ「戦略的競争者」→今や「米国の最重要な相手国」 (台湾は、それを邪魔するトラブルメーカー!)


台湾:米国の保護国→トラブルメーカーへ/問題の焦点=公投 (国民投票) を中国が敵視

転機:阿扁03.7.14 「総統選・公投の同時実施」→ 7.21 国台辧正副主任、訪米。公投阻止を依頼

 03.12.9 ブッシュ大統領、W.で 温家宝首相に「台獨反対」「一方的現状改変に反対」を言明

   →陳水扁総統二期目の総統選以来、米中馴合で緑政権を抑圧・在野の青に好意的


目下、「台湾名義で国連加盟の公投」 (入聯公投)  →米台中が確執

   →米=「現状改変」に反対/台=「現状維持」である/中=「分裂陰謀」に断固反対

 4.11 陳総統、世界保健機関 WHO に「台湾」名義の正式加盟を申請:WHO 事務局長に書簡→WHO,拒否

 6.22 陳総統「自分が頑張れば、次期総統・政権は米中を恐れずに済む」

 7. 4 国民党、「中華民国名義で国連復帰の公投」 (返聯公投) 推進を決議 (馬英九の動揺!)

 7.19 陳総統、国連事務総長に加盟申請書を送付。→拒否される

 7.23 謝長廷、W.で 米高官と会談:入聯公投反対の重圧を受ける。→帰国後述懐:あんなに厳しいとは!

 7.24 国台辧:「台湾当局は 加盟申請/加盟公投実施 の 2手段で分裂を策した」と批判

 7.27 陳総統、再び国連事務総長と安保理議長国 (王光亜国連大使) に 加盟申請書を送付

    → 8.1 王光亜大使、受取拒否を言明/8.8 国連事務局も受取拒否を発表

 8.27 ネグロポンテ国務副長官:香港フェーニックス TV に:台湾の加盟公投を台獨の第一歩・現状改変とみて反対

    → クリステンセン が 7,8月 に 2度訪中、国台辧と「中共が容認できる ギリギリ の線」を確かめての発言

    → 馬英九:「米政府が これほど強い否定を公言したことなし。かなり厳しい警告だ」

 8.29 中国外交部報道官:米政府が台湾加盟申請に何度も反対表明したことを賞賛する

 8.30 WH 国家安保会議 NSC アジア上級部長ワイルダー:中華民国も 台湾も 国家に非ず/中華民国は未解決問題

 8.31 台湾外交部:台湾は主権独立国。台米間に国交がないことは台湾が主権国家であることに影響せず

    行政院大陸委:台湾は主権独立国。中華人民共和国の一部に非ず、互いに隷属せず

 9.11 クリステンセン国務次官補代理:台湾の加盟公投に反対、これが米政府の立場だ!

   →米対台政策の重要転換点! 10.4 ワイルダー 「クリステンセン談話が米の立場の全てだゾ!」 (蕭萬長に)

 9.15 台湾与野党が国連加盟国民投票の大デモ:米国在台協会 AIT, 米フルブライト留学生にデモ参加を厳禁!

 9.17 辜寛敏、NYタイムズ/W.ポストに意見広告:「台湾の民主主義を ゴミ箱に捨てるな!」

 9.18 阮銘、『爭鳴』10月号に 「ブッシュ の 自由戦略の危機」掲載 (日亜協会ホームページ に邦訳掲載)

 9.30 民進党、「正常国家決議文」「幸福台湾競選綱領」を採択。 5点の脅威・不正常に対し、正名

制憲・国連加盟・移行期正義の実現・台湾主体性の確立を進め、台湾を正常な国家とする、云々

11. 5 米中、軍事ホットライン設置で合意:訪中した ゲーツ国防長官と 曹剛川国防部長との間で

11. 9 米国在台協会 AIT台北事務所 ヤング所長、民進党見放し発言?


(2)中国の対台政策:「一中」原則 (台湾を省政府化する原則) /「以商圍政」→「経美制台」

 cf. 李登輝説:文攻武嚇→政経分離→台湾企業抑圧 (新光三越乗っ取り事件) →メディア大戦争


 1)「経美制台」政策:過去 2回の台湾総統選で 介入失敗→対応に困惑。

台辧人士曰く、「台湾政策は難しい、喋り過ぎると駄目、喋り足りなくても駄目、黙っているのは最悪」だ。なぜなら、「喋ると台湾人民を脅したと思われて中国国民党の選挙に不利になり、喋り足りぬと民進党になめられて張子の虎と軽視される。黙っていると、黙認したと誤解される」!

   →国台辧・外交部スポークスマンに 型通りの批判をさせ、米政府を通じて台湾を抑える


2)台湾に特務数万人送付済/台商に青支援強制/国交国に圧力 (台湾孤立化へ)


V. 選挙の争点:経済の動向+中台関係・米台関係

1)過去の趨勢:青=やや優勢だが微減傾向、緑=微増傾向だが、バラバラ

 背景=「中国には絶対支配されたくない」意識の普遍化

 台湾意識の浸透:1992年→2006年 (国立政治大学の世論調査)

  「私は台湾人」=17.3% → 44.4%

  「私は中国人」=26.2% → 6.2%

  「両方である」=45.4% → 44.1%

 青は利益誘導で辛うじて現状維持 (資金↓)


2) 1.12 立法委員選=選挙制度変更。中選挙区 (人中心) →小選挙区 (党中心→青に不利)

 比例代表区=党の正式名を書く。「中国」国民党と書くのに抵抗を覚える? (民進党の期待)

 台聯は泡沫政党化? 李登輝:陳水扁見放し (『壹週刊』発言以降) /民進党を「敵視」?

 9.14 中央選挙委:「不当取得党財産追及要求国民投票案」を公布。→立法委員選と同時実施


3) 3.22 の 総統選=与党・民進党の謝長廷61・蘇貞昌58 vs.野党・中国国民党の馬英九57・蕭萬長68

 民進党の「国連加盟公投」/国民党の「国連復帰公投」を同時に実施

 謝長廷、馬英九に公開討論を要求中/馬英九、中南部→東部に long stay の 顔見せ興行を実施

 緑・青とも勝利を確信。 シラケ派や 無関心派が 増大。投票日直前 の 1週間が勝負

戻 る